死ぬつもりだった。
鶴ヶ城の瓦礫の下で、会津の空に散るはずだった。
だが私は、死に損なった。
気づけば、極寒の斗南という辺境の地で、開墾と飢えに喘ぐ“生”を与えられていた。
これは、義に殉じ損ねた一人の少年が、敗戦と貧困の果てで、
“生き延びること”を選びなおすまでの話。
何が忠義だったのか。誰のための戦だったのか。
雪の中、無言で魚を焼いていた少女と、
遠くの道を黙って歩いていた斎藤一の背に、それを学んだ。
――逆さに燃える桜は、なおも咲いていた。
文字数 11,570
最終更新日 2025.06.07
登録日 2025.05.03